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FSSC22000 v6.0 と JFS-C v3.2 の違いとは?

投稿日:2025年11月24日  最終更新日:2025年11月25日

 

FSSC22000 v6.0 と JFS-C v3.2 の違いとは?

 

こんにちは!ISOコム株式会社 芝田 有輝です。

今回は、FSSC22000 v6.0 と JFS-C v3.2 の違いとは?  について、お話ししてみたいと思います。

個人的な感想も含んでいますので、比較の参考情報として活用いただけましたら幸いです。

では早速、行ってみましょう!

 

■0. 規格毎の概要

  • FSSC22000
    → 「世界で通用する、フル装備の国際免許
  • JFS-C
    → 「日本国内で乗るには十分な、国産免許

どちらも「安全に運転する」=**食品安全のしくみ(FSMS+HACCP+衛生管理)**を作るための規格です。

ただし、

 

  • 世界の大手メーカー・海外の取引先も視野に入れるなら、FSSC22000をベースに考えておく方が“将来の伸びしろ”が大きい
  • まず日本国内で認証を取りたい、社員もHACCP超初心者という場合は、JFS-Cの方がとっつきやすい

というイメージです。

■目次:

  1. 用語説明
  2. FSSC22000とJFS-Cの「中身の構成」
  3. マネジメント(FSMS)の違い
  4. HACCPの違い
  5. 衛生管理(PRP/GMP)の違い
  6. FSSCだけ重いところ/JFS-Cだけ特徴的なところ
  7. 最後に「どっちを選ぶ?」の目線で整理

■1. 用語説明

  • FSMS(食品安全マネジメントシステム)
    → 「会社全体で食の安全を管理するための、仕組み・ルール・記録のセット
    例:目標、責任分担、教育、内部監査、改善 など
  • PRP(前提条件プログラム)
    → 「HACCPを動かすための土台となる衛生管理・設備管理
    例:清掃・殺菌、害虫駆除、ゾーニング、手洗いルール、服装、設備点検 など
  • HACCP
    → 「危険になりそうなポイントを事前に洗い出して、そこで必ず安全をチェックする」しくみ
    例:加熱温度・時間、冷却温度、金属検出機 など

この3つの組み合わせで、

「会社としてどう管理するか(FSMS)」+「現場の日々の衛生管理(PRP)」+「製造ラインの危険ポイント(HACCP)」

をまとめているのが、FSSC22000やJFS-Cです。

■2. 中身の構成

2-1 FSSC22000(Version 6.0)の中身

  • ベース:ISO22000:2018(4〜10章)
  • プラス:ISO/TS 22002-x、PAS221など、業種ごとの衛生管理(PRP)
  • さらに:2.5.1〜2.5.18の“追加要求”
    • フードディフェンス(悪意ある混入対策)
    • フードフラウド(不正混入対策)
    • アレルゲン管理
    • 環境モニタリング
    • 食品ロス・廃棄の管理
    • マルチサイトの管理 など

イメージ:
「ISO22000(本体)+ 厚めの衛生ルール集 + 世界の要求を反映した追加ルール集」

 

2-2 JFS-C(Version 3.2)の中身

  • FSM(1〜27):FSMS=会社全体のマネジメント
  • HACCP(Step1〜12):Codexの12ステップそのまま
  • GMP(1〜…):衛生管理・設備管理(PRP)

特徴:

  • ISO22000:2018の構造や考え方に基本的に沿っている
  • 文章が日本語で具体的(「ゴミ・雑草」「カイゼン提案」などイメージしやすい)
  • 日本の食品法令としっかり紐付くように書かれている

イメージ:
「ISO22000を日本語でかみ砕き、日本の現場向けに具体的にした国産パッケージ」

■3. FSMS(マネジメント)の違い

3-1 共通部分

  1. 会社の状況・課題を把握する
  2. トップが方針と目標を決める
  3. リスクと機会を考える
  4. ルールと記録を作り、教育し、運用する
  5. 内部監査やマネジメントレビューでチェック
  6. 不具合を直し、改善を続ける

というPDCAの回し方はほぼ同じです。

 

3-2 FSSC22000が重くなりやすいポイント

  • 品質も一体で見る(2.5.9)
    • 食品安全だけでなく、「品質方針・品質目標・品質内部監査」も求められる
      ISO9001まではいかないが、それに近いことも一緒にやるイメージ
  • 追加要求(2.5.x)が複数ある
    • フードディフェンス、フードフラウド、環境モニタリング、食品ロス、マルチサイト…など
      → 「世界の大手顧客が気にしているテーマ」を先取りしている分、考えること・書くこと・記録が増える
  • 多拠点管理(マルチサイト)に具体的なルール
    • 本社でどう監督するか
    • 各拠点の内部監査をどう回すか
      チェーン展開している企業ほどFSSCの強みが出るが、負荷も増える

3-3 JFS-C(FSM)が分かりやすいポイント

初心者・中小企業にとって好ましい点は:

  • 法令とのつながりが日本語でハッキリ書かれている
    → 「製造国+販売国の法律を守る」ことがストレートに伝わる
  • カイゼン提案の仕組み(FSM27)を追加要求(FSSC22000にはない)
    → いわゆる日本流の「小さな改善」をシステムに組み込む前提
    → 現場との距離が近い中小企業ほど、現場力をそのまま活かしやすい
  • 文書化・記録のルールがISO9001っぽく整理されている
    → 既にISO9001を持っている会社は、感覚的に理解しやすい

■4. HACCPの違い(ほぼ同じ)

共通のイメージ

  • 危険(ハザード)を洗い出す
  • どこで確実に止めるか(CCP)を決める
  • 基準(温度・時間など)を決める
  • ちゃんと守れているか監視する
  • ダメだった時にどうするか決める
  • 全体を定期的に検証・見直しする

これはFSSCもJFS-Cもほとんど同じです。

違いの“分かりやすさ”ポイント

  • FSSC(ISO22000)側
    • 「CCP」と「OPRP」という2種類の“管理ポイント”を使い分ける考え方
      → 理解に少し慣れが必要(教育コスト)
  • JFS-C側
    • Codex HACCP 12ステップをそのままStep1〜12で書いてある
    • 各ステップに「何を決める・何を記録するか」が整理されている
      教育テキストとして使いやすい

実務の重さはほぼ同じです。

■5. PRP/GMP(衛生管理)の違い

ここが、現場から見て一番“負担差”が出るところです。

 

5-1 FSSC22000(ISO/TS 22002-x+2.5.x)

  • ISO/TS 22002-1(食品製造)など、英語の詳細ルール集がベース
  • そこにFSSCの追加要求が乗る:
    • 環境モニタリング
      → リステリアやサルモネラなど、環境菌を決めた方法で定期的にチェック
    • PRP検証
      → 清掃・殺菌・ゾーニング・設備管理などの「土台ルール」が、ちゃんと効いているか定期的に確認・分析
    • 異物検出機器の要否評価・正当化
      → 金属検出機/X線/マグネットが必要かどうか、“なぜそう判断したか”まで文書化
    • アレルゲン管理をかなり細かく要求
      → 洗浄の検証、ラベルの整合性チェック、レビュー頻度など

RTE製品(調理済み食品)や、海外大手向け製造ではかなり評価される一方、現場の仕事は増える、というイメージです。

 

5-2 JFS-C(GMP)

  • 要求レベルは概ねFSSCと同じ方向を向いている
  • ただし文章は
    • 日本語で具体的(ゴミ・雑草・害虫の表現など)
    • 頻度や分析レベルは「ある程度、会社に任せる」余地もある書き方
  • “中小〜中堅企業が、現実的に回せるレベル感”を意識している印象

結果として、「ギリギリまで国際レベルに合わせたFSSC」 vs 「日本の現場が回しやすいJFS-C」という差になりやすいです。

■6. FSSCだけ負荷のある箇所/JFS-Cだけ特徴的な箇所

6-1 FSSC22000だけ負荷高め(=強みでもある)ところ

  • サービス・購買・試験機関管理(2.5.1)
    → 「原料を買うとき」「試験を外注するとき」「急な代替購入」のルールとリスク評価を細かく求める
  • ラベル・表示・印刷材料管理(2.5.2)
    → 表示ミスや錯誤が起きないように、かなりしつこくチェックと裏付けを要求
  • 品質マネジメント(2.5.9)
    → “食品安全だけでなく品質も一緒に見る”考え方
  • 環境モニタリング(2.5.7)
    → 病原菌などのリスクに応じて、汚染状況を定期的に測る
  • 食品ロス・フードロス/副産物管理(2.5.16)
    → SDGsやCSRを意識した、「捨てる・再利用する」時の安全確保と方針
  • マルチサイト(2.5.18)
    → 多拠点の一括管理のルールがかなり具体

 

これらは、

「海外の大手顧客やグローバルチェーンが気にしていることを、先回りして全部やる」というイメージです。
負荷はありますが、“海外お客様に通用する安心材料”にもなります。

 

6-2 JFS-Cだけ特徴的な箇所

  • カイゼン提案(FSM27)
    → 「現場からの改善アイデアを集め、食品安全に活かしましょう」という条文
    → 日本の中小企業がもともと得意な文化を、そのままシステムに乗せやすい
  • 日本の食品法令との紐付けが分かりやすい
    → 行政の監査や、国内取引先への説明にとても使いやすい
  • 用語・構造が日本語で整理されている
    → 「現場教育用テキスト」としてそのまま使えるレベル

■7. 選ぶ基準の整理

7-1 FSSC22000を選ぶ基準

  • 今後、海外のお客様や海外グループ会社との取引を視野に入れている。
  • 品質(クレーム・歩留まり・仕様)も一緒に管理したい
  • 将来的に
    • OEM/PB品の輸出
    • 海外の有名ブランドとの取引
    • 複数工場

を視野に入れている

→ こういう会社様でしたら、

「最初からFSSC22000で作っておいた方が、後で“世界対応オプション”を付け足す手間が少ない」

ので、負荷は高くても長期的には得なケースが多いです。

 

7-2 JFS-Cを選ぶ基準

  • 生産のほとんどが日本国内向け
  • 工場規模は単一工場~2〜3工場くらい
  • HACCPもISOもほぼ初めてで、現場メンバーも衛生管理の基礎からという状態
  • とにかく、
    • 「まず認証を取って取引先の要件をクリアしたい」
    • 「現場の意識を上げたい」
      という 第一ステップが目的

→ こういう会社様でしたら、

「JFS-CでHACCP+FSMS”をまず作る」
→ 数年後、必要になったらFSSCにステップアップ

というルートが現実的です。

一方で、審査機関数は、JFS-C規格が登場した当初から数社減り、現在2社のみ。認証件数は120件

 

7-3 FSSC22000のメリット

  1. 世界共通言語になる
    • 海外のバイヤーや大手チェーンに対して、説明が1回で済む
    • 「FSSC22000認証」と一言で、求められる水準が伝わる。
  2. 後から上乗せ対応が少なくて済む
    • 今後さらに
      • フードディフェンス
      • フードフラウド
      • 環境モニタリング
      • SDGs(フードロス)
        を取引先から求められる流れは、今後間違いなく強まる傾向にあります。
    • FSSCなら、最初からその辺まで含めて仕組みを作るので、
      「後でまた別で管理」「別のシステムを増やす」が減る。
  3. 「食品安全+品質」を一体管理しやすい
    • 品質トラブルも、食品安全トラブルも、
      同じ枠組み(方針・目標・内部監査・是正)で扱えるので、
      経営層・品質部門にとってはマネジメントしやすい形になる。
  4. 将来の採用力・ブランド力にもつながる
    • 若い人材・技術者にとって、
      「世界レベルの規格を運用している工場で働いている」ことは
      キャリアとしても価値がある
    • 会社としても「グローバルスタンダードの食品安全」を掲げやすい。

■8.まとめ

  • どちらの規格も「食を安全にするための仕組み」を作る規格
    • 中身(FSMS+HACCP+衛生管理)の考え方は、ほぼ共通です。
  • FSSC22000は、世界の取引を見すえた「フルスペック版」
    • 追加要求が多く、最初はしんどいかもしれませんが、
    • 一度きちんと作り込めば、**海外顧客・多拠点展開・品質管理まで含めて、“あとから困りにくい”**という大きなメリットがあります。
  • JFS-Cは、日本語で分かりやすく、国内向けに始めやすい規格
    • まず1歩目を踏み出すには、良い選択肢です。

いかがでしたでしょうか。

FSSC22000 v6.0 と JFS-C v3.2 の違い について、ご理解いただけましたでしょうか。

 

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